京野アートクリニック スタッフブログ

仙台と高輪にある不妊治療専門クリニック「京野アートクリニック」スタッフブログです。一般不妊治療では妊娠が難しい方のために、人工授精、男性不妊治療、体外受精や精巣内精子を使った顕微授精等、高度生殖補助医療の専門クリニックです。

2018年06月

男性の妊孕性温存~精子凍結~

以前、『乳ガンと妊孕性温存について』というコラムでは、女性の妊孕性温存(若年がんなどに対する治療によって将来子どもを授かる可能性が無くならないように生殖機能を温存すること)について紹介させていただきました。
今回は、男性の妊孕性温存についてご紹介させていただきます。

◆若年の日本人男性に多いがん
若年(15歳以上40歳未満)の日本人男性に多いがんとして、精巣腫瘍(がん)と白血病などの血液のがんが大半を占めます。特に精巣腫瘍は、20歳~30歳でかかる人が急増します。
今回は精巣腫瘍についてお話していきます。

◆精巣腫瘍について
精巣腫瘍にかかる確率は10万人に1人程度ですが、食事の欧米化などの食生活の変化やライフスタイルの変化によって年々増加傾向にあります。
特に、20~30歳代の男性では最も多いがんの一つです。
要因は様々ありますが、男性不妊症、特に精液検査で異常のある男性に多いとされています。
主な症状は、片側の精巣の腫れや硬さの変化ですが、多くの場合痛みや発熱などがないため、かなり進行しないと気付かないことも少なくありません。
しかし、がん治療が効きやすく、がん全体に比べて死亡率は0.1%未満と少なく、比較的予後は良好です。

◆がん治療による生殖機能へのダメージ
精巣は抗がん剤や放射線によるダメージを受けやすく、生殖可能年齢での化学療法や放射線療法は生殖機能を著しく低下させる可能性があります。
化学療法で使用する薬剤のうち、アルキル化剤や白金製剤は、一時的に無精子および精子減少を引き起こすとされています。しかし、80%は5 年以内に正常に戻るとされています。
他の報告でも化学療法後では50%以上の症例に精子数の回復が認められていますが、妊孕性が回復しない場合もあります。また、精子数が回復しても、精子の質は治療後に落ちるという報告があります。
放射線療法では、照射線量が多いほど不妊期間が長くなるとされています。
また、泌尿器科系がんや直腸がんの手術療法後に、性機能障害(射精障害、勃起障害、性欲の減退)や性交障害がみられることがあります。
がん治療後に推奨される避妊期間ですが、催奇形性を有する薬剤を投与した場合、薬剤の半減期の5倍に90日を加算した避妊期間が必要だと言われています。

◆妊孕性温存のための精子凍結の適応
 がん患者様においては、なによりもがん治療が最優先されるべきですが、担当医師によって妊孕性温存を考慮することが可能であると判断された場合、がん治療を始める前に精子を採取し凍結保存をすること(精子凍結)をお勧めします。
将来、がん治療によって妊孕性が低下していても、治療前の精子を凍結しておくことで、パートナーの方との間にお子様を得られる可能性を残すことができます。
一般に精子凍結の積極的な適応となるのは、
①精巣摘出によって精子形成ができなくなる場合
②がん治療によって精子形成が障害される場合
③手術療法の影響で精子の通り道が塞がってしまう(閉塞性無精子症)場合や、神経障害により射精障害となる場合です。

◆精子凍結の方法
凍結する精子の採取は、マスターベーションによる精液の回収が一般的な方法です。短時間で可能であり、抗がん治療を遅らせずに実施することができます。
射精した精液中に精子が確認できなかった場合(無精子症)や、精液所見が著しく悪い場合、精巣内精子採取術(TESE)という採取方法もあります。なお、手術の適応となるかどうかは医師との相談になります。

 妊孕性温存のための精子凍結をご希望の方、詳しい情報を知りたい方は、お電話やスタッフに直接お問い合わせください。

仙台看護部 池田律子、佐々木琴美


【参考資料】
・特定非営利活動法人日本がん・生殖医療学会(JSFP)
http://www.j-sfp.org/about/index.html
・小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究
http://www.j-sfp.org/ped/index.html
・がんと妊娠の相談窓口 がん専門相談員向け手引き第2版
http://www.j-sfp.org/ped/dl/teaching_material_20170127.pdf
・国立がん研究センター 「がん情報サービス」に<小児・AYA 世代のがん罹患> 統計解説ページを新規掲載 小児・AYA の最新の罹患率とがん種順位も公表
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2018/0530/release_20180530_01.pdf
・Moss JL, Choi AW, Fitzgerald Keeter MK, Brannigan RE. Male adolescent fertility preservation. Fertil Steril. 2016 Feb;105(2):267-73
・Chiba K, Fujisawa M. Fertility preservation in men with cancer. Reprod Med Biol. 2014 Apr 26;13(4):177-184
・日本癌治療学会 がん診療ガイドライン 精巣腫瘍ガイドライン
http://www.jsco-cpg.jp/item/25/index.html

不妊治療とライフスタイル

不妊治療を受けられている患者さんから、アルコールは摂取してよいか、ストレスはためない方がよいのか?という質問をよく耳にします。

そこで、今回はライフスタイルと体外受精についてまとめた論文をご紹介させていただきます。

タイトル:Female and male lifestyle habits and IVF: what is known and unknown 
      男女のライフスタイルとIVF~わかっていることとわからないこと~
雑誌名:Human Reproduction Update, Vol.11, No.2 pp.180-204, 2005
著者:H.Klonoff-Cohen (USA)

こちらの論文は、ライフスタイル(喫煙、アルコール、カフェイン、心理的ストレス)が採卵、受精、移植、妊娠、出生児に与える影響をまとめた総論となります。

喫煙と体外受精
タバコの煙はニコチンや一酸化炭素など多くの有害物質を含んでいるため、
喫煙は妊娠に悪影響があるという報告は多数あります。
男性においては、喫煙は精子に悪影響を引き起こすという報告が数多くあり、精子量や運動率低下と関連があると述べています。
女性側に影響するメカニズムのひとつとしては、能動喫煙、受動喫煙に関わらず、卵子の透明帯を厚くしてしまい、受精障害、着床障害などを引き起こすと考えられています。
したがって、男女共に喫煙は体外受精に影響を及ぼす可能性が高いです。
当院においても、治療を受けられる患者さんには、ご夫婦共にまず禁煙をすすめております。

ストレスと体外受精
不妊治療の過程は日々のホルモン注射、採血など治療自体をストレスに感じている方が多いと思います。実際に、治療時の心理的ストレスは妊娠率や流産率などに悪影響があるという報告は多くあります。
しかし、この心理的ストレスによるメカニズムは研究段階にあり、今後は、ストレスが体外受精の予後に影響を及ぼすメカニズムをより詳しく調査しなければならないとのことでした。


アルコールと体外受精
男女のアルコール摂取は、体外受精へのリスク因子となることが報告されています。
女性のアルコール摂取は、卵子回収率、妊娠率低下、流産リスクの上昇と関連しており、
男性においては、体外受精を試みる1ヶ月前にアルコールを摂取しなかった人と比較して、摂取した人は流産率が上昇したとの報告があります。
加えて、摂取量が増えれば増えるほどアルコールがリスク因子となるといった報告もあります。
しかし、アルコール摂取が体外受精に影響しないといった報告もあるので、摂取量に依存することが考えられます。そのため、過度の摂取は控える方が望ましいかもしれません。
メカニズムとしては、マウスの実験において、受精前の発情周期にアルコールに暴露されると、紡錘体に作用し、卵子に異常を引き起こします。その卵子で受精しても、異常胚になるため、妊娠初期において高確率で流産すると述べられていました。また、マウスにおいては着床にも悪影響が出るとのことでした。
しかし、これらはあくまでもマウスにおける結果であるので、今後さらなる研究が必要であると考えられます。

カフェインと体外受精
カフェインの培養液添加は精子の運動率を上昇させることが知られています。しかし、受精率、胚発生率の減少と関与するといった報告もあります。
また、女性のカフェイン摂取は、量と期間依存的に流産率、出生率に影響することが報告されています。女性への悪影響が起こるメカニズムとしては、カフェインがエストラジオールやプロラクチンレベル、排卵抑制、黄体機能に関与すると報告されています。男性においては、摂取量は精液所見に影響しないと筆者らは述べていました。

まとめると、それぞれ以下の項目との関与が認められています。

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●は科学的に根拠があることを示しています。


喫煙されている方はご夫婦で禁煙し、ヨガや旅行などご自身でストレスを発散できる方法を見つけて治療に臨むとよいかもしれません。
アルコールとカフェインについては適宜適当量の付き合いをしていくとよいかと思います。
また、これらのライフスタイルとは別にバランスのとれた食生活を心がけるのも大事になってきます。
必要な栄養や食生活については妊活ノートに記事がたくさんありますので、ぜひご参照ください。

過度に神経質になる必要はないかと思われますが、健康な生活を心がけるとよいのかもしれません。

高輪培養部 小倉

職場に治療のことを伝えるかどうか

こんにちは、生殖心理カウンセラーの菅谷典恵です。

5月20日に開催されました妊活イベントにて「治療中のストレスとの付き合い方」というお話しをさせていただきました。
今回はその一部についてお伝えしたいと思います。

生殖医療を受けるにあたって受けるストレスは、
・身体的ストレス
・時間的ストレス
・経済的ストレス
・心理的ストレス
があると言われていますので、私の担当である心理的なストレスとの付き合い方、ということを分析しました。

心理的なストレスの主な内訳として、
①治療の難しさ(ネット情報との付き合い方)
②パートナーとの温度差
③対人関係
の3つを挙げ、これらと上手に付き合うためのコツのようなことをお伝えしました。

終了後、質問に来てくださった方が数名いらっしゃいました。
その中で治療のことを会社の人たちと共有すべきかせざるべきか、するとしたらどのようなことを伝えるべきか、というお話しをいただきました。

NPO法人Fine~現在・過去・未来の不妊体験者を応援する会~による2014年の調査によりますと、仕事と治療との両立を困難と感じている妊活女性は90%にのぼるということです。
そのため、仕事と治療と生活全般の調整は不可欠であるということがわかります。
また福岡で行われた調査では、治療中の女性の50%以上の方が治療していることを職場の方に打ち明けていて、打ち明けた人のうちの86%は「打ち明けてよかった」と感じているということです。

この「職場に治療していることを伝えるか」という話題はカウンセリングの中でとても多く登場するものです。
一般的なこととして、どのような配慮を持って考えたら良いのかという点についてまとめたいと思います。

まず初めに、この問題を考える上で大切なことは、
結果的に自分を守れる状況を作る
ということです。

・黙って休んでいると、どこか身体が悪いのか、この先仕事を続けられないのではないかと疑いを持って見られる可能性がある。
・精神的な問題を抱えているので休みがちなのではないかと思われる。
・転職活動をしているのではないかと勘違いされる。
などといった状況を予防した方が賢明なため、ある程度疑われないための情報は伝えておいた方が良いかもしれません。

そのうえで、

・職場の所属チームの構成
・上司の性別、年齢層、パーソナリティー
・男女比
・産休取得率
・勤続年数
・役職についているか?
・生殖医療を受けている人がほかにもいそうか?
・周りの人の口の堅さは?
・普段から相談をしていた同僚がいるか?
・会社の考えはどうか?
などを踏まえたうえで一緒に対策を考えていきます。

また、そもそも治療を受けていることを伝えても良いか、伝えたくないか、ということは
とても重要なことです。やはり気持ちは大切にしたいところですね。

どちらにしても対処方法はあります。
しかし、個別の要件によって対処が変わってきます。

迷っている方がいらしたらカウンセリングも利用してみていただきたいと思います。
そして、一緒に具体的に考えてみましょう。
ご自分がラクになれる方法が見つかればベストです。

仕事も生活も上手に楽しんでいただきながらの通院を、当院は目指しています。
そのため始業には間に合うように朝8時からの診療も行っております。

カウンセリングもぜひお気軽にご利用くださいませ。

生殖心理カウンセラー 菅谷
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