京野アートクリニック スタッフブログ

仙台と高輪にある不妊治療専門クリニック「京野アートクリニック」スタッフブログです。一般不妊治療では妊娠が難しい方のために、人工授精、男性不妊治療、体外受精や精巣内精子を使った顕微授精等、高度生殖補助医療の専門クリニックです。

タイムラプスモニタリングシステムを用いた観察の重要性

当院では2018年1月より、全症例タイムラプスシステムを用いて、特に重要と言われる受精確認から第1分割までの観察を重点的に受精卵(胚)の観察をしております。タイムラプスとは胚の成長を連続して観察することができる装置で、成長の過程で起こる重要な現象を見逃すことなく培養することができます。
通常の観察方法では、約10〜15%の受精卵において前核が消失しており、受精しているかどうか、正常受精しているかの判断が難しいというデメリットがありますが、タイムラプスを用いることで前核の確認を確実に行うことが可能です。
また、「異常な分割(ダイレクト分割、リバース分割、不明瞭な分割など)」や1つの割球に複数の核が出現する「多核」の発見も可能です。

<正常な受精および第1分割>
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<異常な分割:ダイレクト分割>1細胞から3細胞以上に分割
 
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<異常な分割:リバース分割>一度分割した細胞が戻る
 
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<異常な分割:不明瞭な分割>分割がはっきりせず、分割面が不明瞭
 
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<多核>1つの細胞に通常1つである核が2つ以上ある
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更に、分割時間を細かく記録できるため、そのデータを元に様々な分析をすることもできます。


今回ご紹介するのは、タイムラプスで観察された「異常な分割」「多核」「発生速度」によって胚の発生能および倍数性(染色体数が正常であるか)が予測できるのか?という論文です。2018年にアメリカから発表された論文です。

【論文タイトル】Are cleavage anomalies,multinucleation,or specific cell cycle kinetics observed with time-lapse imaging predictive of embryo developmental capacity or ploidy?

【雑誌名】Fertility and Sterility 2018

【著者】Nina Desai et al.

<対象>
2012年~2016年にアメリカ オハイオ州のクリニックでICSI(顕微授精)を行い、胚盤胞でPGS(着床前スクリーニング)を行った130名の患者。患者平均年齢は36.3±4.3歳。
※現在、日本ではPGSは認可されておりません。

<結果1>
・ダイレクト分割、不明瞭な分割が観察された胚の拡張胚盤胞率は低下する。
・ダイレクト分割、リバース分割、不明瞭な分割、多核の事象が“単体”で観察された胚でも、異常な事象が観察されなかった胚と比較して染色体正常率は変わらない。しかし、これらの異常な事象が“複数”観察された場合は染色体正常率が有意に低下する。


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<結果2>
・tSB(胚盤胞腔形成開始時間)、tEB(拡張胚盤胞到達時間)、tEB-tSB(胚盤胞腔形成開始から拡張胚盤胞到達までの時間)が染色体正常率に関係している。
・tSB ≧ 96.2h、tEB > 116h、tEB-tSB >13hで染色体正常率が有意に低下する。

 
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これらの結果より、異常な事象及び後期胚の発生速度(通常、培養4日目~6日目で胚盤胞になります)によって染色体正常率が異なることが分かり、タイムラプスを用いた観察の重要性が示されました。

京野アートクリニックでは、希望性(有料)になりますが、受精から6日目までの胚発育過程の動画をUSBに入れてお渡しし、3日目初期胚もしくは胚盤胞までの分割時間等により良好胚を選択する際の指標となるKIDScoreの解析を行い、報告書を作成・説明しております。
詳細はスタッフにお申し付けください。

(高輪培養部 相良)

今やってるドラマは観たくない

こんにちは、生殖心理カウンセラーの菅谷典恵です。

生殖医療を受けている夫婦をテーマとしたドラマが放映されています。
患者さまのお話しでたまたま話題になると、

「観ている、自分と同じような状況で共感できる」
「だんなさんに一緒に観て欲しい」

という方もいらっしゃいますが、

「観たくない」「観られない」

という方も多くいらっしゃいます。
自分にとって真っ最中のことにあまり関わりたくない、というお気持ちは当然だと思います。自分とテーマの距離が近すぎますよね。

「今まさに、自分に起こっていること」と向き合うというのは大変なことです。
自分だけの殻の中に閉じこもって、じっと考えたいときもあります。
まだどうなるかわからないことを人に話すと、大切な気持ちが漏れて行ってしまいそうに感じることもあります。

私はクリニック内で日々患者さまのお話しをうかがっています。
当院に通院されている患者さまは、何らかの形で「カウンセリングも利用してください」というメッセージを受け取られていることがあるかもしれません。

しかし、「今まさに、自分に起こっていること」である治療に関することを、人に話す気分にはなかなかならなれないことも承知しています。
うるさくお感じでしたら申し訳ないなと感じています。

実際にカウンセリングにお越しくださる方々は、もちろん治療のことも話されますが、「過去のこと」を話されることがとても多いです。
自分の中では過ぎ去ったことだけれども、振り返って話してみたくなることが意外に多いのかもしれません。

カウンセリングとは、辛いことを話さないといけない場ではありません。
「今の私が話したいことを話す」これがカウンセリングです。

3月11日が今年も過ぎました。
7年経ちました。
7年経っても話せないことや自分の中では終わっていないことも、世の中にはたくさんあると思います。
そして、7年経ったから話せるようになってきたこともあることでしょう。

また、毎年3月11日や、自分にとって重大な出来事があった日が近づいてくると苦しくなる方もいらっしゃると思います。
これは「記念日反応」と名前が付けられていて、ごく当たり前の反応です。
ひとつのきっかけからいろいろなことが想起されて、記憶がよみがえるのです。

生殖医療でもしばしば起こりえます。

「1年前のあの日に人工授精したな~」
「〇年前の1月に流産しちゃったんだな、生まれていればもう〇歳になっているのね」
「妊娠反応が出た日はこのワンピースを着ていたんだった。ちょうど桜の花が咲き始めていたな~。」

という感じです。

いつまでが自分にとっての真っただ中なのか、いつから過去のことになっていたのか、振り返って考えてみないとわからないと思います。

自分の中で何かが過去になり誰かに話してみたくなったら、カウンセリングがあったなと思い出してください。
当院では治療が終わった後のフォローとしてもカウンセリングがご利用いただけます。

「今やってるドラマは観たくない」
ごもっともだと思います。

もちろんご覧になっている方も、
ご主人に一緒に観てもらいたいと思っている方も、
ご主人が観てくれなくて悲しい方も、
ご自分のペースでお付き合いされれば良いと思います。

どうぞご自分の気持ちを大切になさってください。

生殖心理カウンセラー 菅谷

音楽の癒し効果について

 今回のコラムは、高輪受付部の相澤が担当させていただきます。

 テーマは「音楽の癒し効果について」です。

 クリニック内では常にBGMが流れています。クラシックや映画音楽、オルゴール、季節の音楽など、色々なBGMが使用されています。アンケートでご要望のあったJAZZを流したりしましたが、お気付きになった方はいらっしゃいますでしょうか。

 診察中はあまり感じないかもしれませんが、受付や待合ホールなどでは自然と耳に入ってくる音楽楽。普段の生活でも色々な音楽が流れていますが、音楽の「テンポ」は聴き手の印象に最も影響を与える要素であり、癒し効果にも大きく影響していると言われています。『ヒーリングミュージック』と言われている音楽を聴いたことのある方も多いと思いますが、それらの音楽のテンポに着目した論文がありましたので、ご紹介させていただきます。

 人の安静時の心拍数は70BPM(Beats Per Minute)前後で、遅い人では60BPM~速い人では90BPMくらいの幅があると言われています。実験では、人が「癒されている」と感じるBPMは60BPM前後という結果になり、すなわち遅めの心拍数と同じくらいということになります。これは、心拍数が聴覚を通して入ってくるテンポに合わせようとする「同調」と呼ばれる性質を持っているためと考えられています。すなわち、耳に入ってきた音楽のテンポが人の安静状態の心拍数と同じくらいのとき、人の精神テンポが音楽のテンポに「同調」することで癒しを感じるということです。流行の邦楽のテンポは50~180BPMまで広く分布しているのに対し、『ヒーリングミュージック』と言われる音楽のテンポは、60~70BPMのものが多いそうです。よって『ヒーリングミュージック』のテンポは人の癒しの感性が反映されていると言えそうです。

 別の実験では、音楽の評価を「癒し」ではなく「好み」という指標で計ったところ、心拍数の1.0倍/1.5倍/2.0倍に相当するテンポの評価が高かったとされています。すなわち、60BPM/90BPM/120BPMくらいの音楽が好まれているということになります。「癒し」で評価すると心拍数と同じくらいのテンポがよいとされていますので、これとは異なる結果と言えます。この理由としては、「癒されている」と感じるのは、聴いているときの心拍数に強く影響されているため、「同調」がより顕著に表れたからだと書かれています。

 元気になりたいときはテンポの速い快活な音楽を聴くのもよいですが、ちょっと疲れたなと感じるとき、夜寝る前に聴きたいときなど、「癒されたい」という気持ちが大きいときに音楽を聴く場合は、好きな音楽の中でも、アップテンポの曲ではなく、60BPMくらい(秒針と同じくらい)の曲を選んでいただくのが「癒し」効果が高いかもしれません。

 音楽は、楽器の音色や音調など、テンポ以外にも色々な要素で構成されていますので、今回ご紹介した内容を指標の一つとして、ご自身の好みの「癒しの音楽」を探してみてはいかがでしょうか。

<参考文献>

岡松 恵太, 福本 誠, 松尾 一壽「ヒーリングミュージックのテンポと癒し効果 

 ヒーリングミュージックの音響的特徴により作成された単音による心理評価」


高輪受付部 相澤
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